理系の大学に入るとだいたい1,2年生でテイラー展開とフーリエ級数展開を勉強することになりますが,これ何やってるんだってなった方いませんか?
僕は高校生のときは数学が好きだったのですが,テイラー展開を初めて教わったとき全く意味が理解できなくて少し数学を嫌いになってしまった経験があります。
勿論先生の教え方にもよると思いますが,どうしても時間の限られた講義の場では数式を追う淡泊なものになりがちな気がします。
数式を覚えたり式変形していったりすることも当然重要なのですが,結局一番大切なのはその数式の「心」を理解することなのではないかと僕は思っています。
それでは本題に入ります。
目次
テイラー展開とフーリエ級数展開の数式表現
テイラー展開
$f(x)$の$x=a$周りでのテイラー展開は
$$f(x) = \sum_{n=0}^{\infty} \frac{f^{(n)}(a)}{n!} (x-a)^{n}$$
となります。右辺は$x$についての多項式となっていますね。
フーリエ級数展開
$f(t), -\pi \leq t \leq \pi$のフーリエ級数展開は
$$f(t) = a_{0} + \sum_{n=1}^{\infty} (a_{n} \cos nt + b_{n} \sin nt)$$
ここで係数係数$a, b$は
$$a_{0} = \frac{1}{2\pi} \int_{-\pi}^{\pi} f(t) dt, $$
$$a_{n} = \frac{1}{\pi} \int_{-\pi}^{\pi} f(t) \cos nt dt, $$
$$b_{n} = \frac{1}{\pi} \int_{-\pi}^{\pi} f(t) \sin nt dt $$
です。右辺は$\sin, \cos$の足し合わせになっています。
テイラー展開とフーリエ級数展開の意味
テイラー展開とフーリエ級数展開は一見全く違う数式に見えますが,言っていることは殆ど同じで,ある関数を別の関数の足し合わせで表そうとしています。
この2つの展開の違いは関数をどういった成分の足しあわせで表そうとしているかです。そして係数はその成分がどのくらい関数に含まれているかを表しています。
テイラー展開は$-\infty \leq x \leq \infty$の範囲で$f(x)$を$x, x^{2}, x^{3}$などの$x$のべき乗の線形和で表そうとしているものです。
無限級数和のところを有限にすることで,近似していく様子を見ることができます。
Fig. 1は$\sin x$をテイラー展開(マクローリン展開)する様子です。
ちなみに$\sin x$は奇関数なので$x^{2}, x^{4}$などのような偶関数成分が含まれていないため係数は0になっています。
フーリエ級数展開は$-\pi \leq t \leq \pi$の範囲で$f(t)$を$\sin t, \cos t, \sin 2t$などの三角関数の線形和で表そうとしています。
テイラー展開同様有限の和で近似することで理解しやすいかと思います。Fig. 2は矩形関数$\Pi (\pi/2)$をフーリエ級数展開する様子です。
矩形関数は偶関数なので実は$\sin$の係数$b_{n}$は全て$0$になっています。
実問題のアナロジーを考える
考えてみると現実においてもこれに似たことはよく見かけます。
例えばカレーを作ることを考えてみると,お肉や玉ねぎ,人参,じゃがいも,カレールーなどが必要だと思います。
つまりさっきの話で言う関数がカレーで,それを構成する$\sin x$などに対応するものがその材料に当たるわけです。
こう考えると係数にあたるのはその材料の量でしょうか。
こんな形で数学を現実の事象とのアナロジーを取ることでイメージを掴むのは,人によっては理解への近道になるかもしれませんので是非考えてみてください。
まとめ
テイラー展開とフーリエ級数展開をイメージで理解する例をご紹介しました。
これを見てテイラー展開やフーリエ級数展開を思ったより簡単だなと感じてくれる方や数学の面白さを感じてくれる方がいればとても嬉しいです。
簡単なことや当たり前のことを数学は少し難しく表現してしまうことはよくあります。
ただ,これは厳密さを保つために仕方がないことで,慣れてくるととても簡潔で綺麗に見えてくるものです。
今回扱った題材をもっと広く一般に扱っている数学に「関数解析」という学問があります。入門書と言って良いのか分かりませんが,以下の本の関数の直交性などの概念が関数解析の入り口かと思いますので挙げておきます。
この本はフーリエ変換やウェーブレット変換など他にも面白いトピックがたくさん詰まっている本なのでとてもオススメです。
それではお疲れ様でした。